この記事の要点
- B2Bの事例は「どの段階の数字か」で読み方が変わります。 クリック、サイト到達、登録・リード、商談、受注のうち、公開事例の多くは途中の段階までしか示していません。
- 同じB2Bでも結果は分かれています。 ROAS約2倍、登録単価が検索広告より約30%低いという報告がある一方、739クリックで有望リード0件の例や、問い合わせ単価は安くても顧客獲得単価ではGoogle検索広告が下回った例もあります。
- B2Bで試すなら、成果を段階ごとに定義し、商談・受注まで追える状態を先に作ります。 相談の段階に合わせて、資料・比較ページ・デモなど提供するものを変えます。
読んでほしい人:SaaS、業務サービス、製造業向けサービスなど、法人向けの商材でChatGPT広告を検討している広告担当者。
この記事で扱わないこと:業種を問わない事例一覧は事例7選、CRMとの連携手順はHubSpot連携の記事で扱います。
B2Bの成果は5つの段階に分かれる
B2Bでは、広告のクリックから受注まで距離があります。公開事例の数字が、どの段階を示しているかを最初に確認します。
段階 | 見る指標 | 分かること | 分からないこと |
|---|---|---|---|
1. 表示・クリック | CTR、CPC | 広告が反応を得たか | その人が見込み客か |
2. サイト到達 | クリックに対するセッションの割合 | クリックがサイトに届いたか | サイトで何をしたか |
3. 登録・リード | 登録数、問い合わせ数、単価 | 接点が作れたか | 有効な商談になるか |
4. 商談 | 有効な商談の数、商談化率 | 営業が扱える相手か | 受注になるか |
5. 受注・売上 | 受注数、顧客獲得単価、ROAS | 事業として採算が合うか | ― |
公開事例6件:どの段階まで分かるか
事例 | 商材・条件 | 公表された結果 | 示している段階 |
|---|---|---|---|
開発者向けAPI企業Q | チャット・動画などのAPI。2026年6月5日〜8月5日、各テスト群の媒体費約1万ドル | クリックの70%超がサイトのセッションに(他の媒体は10%未満)。開発者向けキャンペーンでROAS約2倍 | 到達、売上(算定方法は非開示) |
フォーム作成SaaS AC | フォーム作成・業務自動化ツール。4月開始 | クリックの10%超が登録。登録単価は検索広告より約30%、SNS広告より60%低い(2026年7月の社内データ) | 登録 |
SaaS支援の代理店AA | B2B SaaS 3社(単価3,000〜1万ドルの商材と5万ドル超の商材)。3か月 | 3社合計で有望リード150件超。リード単価は各社ともGoogle広告の半分未満 | リード(有望の定義は非開示) |
B2B支援会社A | 自社のマーケティング支援。3業種向けに配信 | 2,319ドルで739クリック、CTR1.1%、CPC3.14ドル、有望リード0件(Google検索広告は同社で有望リード2件) | リード(0件) |
米国の広告支援会社V | 顧客のB2Bコンプライアンス支援企業。30日間 | 問い合わせ単価はChatGPT広告92.21ドル・Google検索広告157.57ドル(クリックから問い合わせに至った割合は0.8%対6.64%)。問い合わせからの顧客化率はGoogle検索広告が大幅に高く、顧客獲得単価はGoogle検索広告が低い | 受注(営業期間が長く未確定) |
ドイツの太陽光・電力サービスX | 集合住宅の所有者・管理会社向けサービス | 数値の成果は非開示。問い合わせ送信・予約・電話タップを成果とし、業務システムで流入元を識別 | 設計例 |
出典:開発者向けAPI企業Q、フォーム作成SaaS AC、SaaS支援の代理店AA、B2B支援会社A、広告支援会社V、太陽光・電力サービスX
いずれも広告主または運用者の自己報告です。表の上から2件(QとAC)はOpenAIの公式事例、残りは運用者のブログです。
段階ごとの読み方
段階1:安いクリックは、リードを意味しない
B2B支援会社Aは、自社のマーケティング支援を製造業・金融・マーケティングの3つの対象に向けて配信しました。CPCは3.14ドルで、同社のGoogle検索広告(6.76ドル)の半分以下でした。一方、CTRは1.1%対5.2%で、有望リードは0件対2件でした。ただしGoogle検索広告側の期間・費用は公表されておらず、同社も「直接の比較ではない」と断っています。
同社は、Google検索広告は「解決策を探している人」の意図を拾い、ChatGPT広告は「問題を調べている人」に届く、検索とSNSの中間のような媒体だと説明しています。また、キーワードの一致で絞るGoogle検索広告と違い、コンテキストヒントは網が広く、それがクリック単価の低さの説明になり得る一方、どこに表示されるかの管理は弱くなるとも書いています。
段階2:クリックがサイトに届いているか
開発者向けAPI企業Qは、クリックの先を評価する最初の指標として、クリックがサイトのセッションになった割合を見ました。ChatGPT広告は70%超、比較した他の媒体は10%未満だったと報告しています。
この数字は「来訪した人が見込み客だった」ことまでは示しません。ただ、B2Bでクリック単価を他の媒体と比べる前に、そのクリックが実際にサイトに届いているかを確かめる必要があることを示しています。
段階3:登録・リードの定義をそろえる
フォーム作成SaaS ACは、登録を成果にし、登録単価を検索広告・SNS広告と比べました。SaaS支援の代理店AAは「有望なリード」を成果にしています。
ここで確認したいのは、比べている成果の定義です。無料登録・資料請求・デモ予約・問い合わせでは、同じ1件でも受注までの距離が違います。SaaS支援の代理店AAの「有望」の基準は公表されていません。
段階4・5:問い合わせ単価と受注単価は逆転し得る
米国の広告支援会社Vの報告は、B2Bで最も注意したい点を示しています。30日間でChatGPT広告の問い合わせ単価はGoogle検索広告より低かったものの、問い合わせから顧客になる割合はGoogle検索広告の方が大幅に高く、顧客獲得単価はGoogle検索広告の方が低かったと書いています。なお、この顧客のChatGPT広告のCPC(0.76ドル)は、同社が他の顧客で通常見ている3〜5ドルより低く、期間中にはCPCが0.06ドルまで下がった日もあったと説明しています。
同社は注意点として、Google検索広告は何年もかけてリードの質を最適化してきたこと、営業期間が長く最終的な受注数はまだ確定していないことを挙げています。つまり、30日時点の受注単価の比較も、まだ途中経過です。
既存の事例7選で紹介した金融アドバイザー紹介サービスOについては、運用支援会社が、CRMで承認されたリードを基準に比較し、初月はGoogle検索広告の3.2倍だった単価が6か月目に35%低くなったと報告しています(Google側の月間予算はChatGPT側の3.5倍)。同じ定義で、十分な期間をかけて比べることが、B2Bの評価では欠かせません。
B2Bで試すときの設計(当社の提案)
1. 成果を段階ごとに定義し、CRMで追えるようにする
段階 | 成果の定義の例 | 計測する場所 |
|---|---|---|
リード | 問い合わせフォームの送信完了 | 広告管理画面(Pixel/Conversions API)、GA4 |
有効リード | 営業が対象と判断したもの | CRM |
商談 | 初回商談を実施したもの | CRM |
受注 | 契約したもの、金額 | CRM・販売管理 |
広告の管理画面で見えるのは、基本的にリードの段階までです。有効リード以降は、CRMに流入元(UTMやキャンペーンID)を残して集計します。ドイツの太陽光・電力サービスXも、業務システム側に流入元の識別を用意してから配信を始めたと説明しています。CRMとの連携方法はHubSpot連携の記事と効果測定の記事で扱っています。
2. 相談の段階に合わせて、提供するものを変える
公開事例では、相談の段階によって広告の先に置くものを変えた例が報告されています。
相談の段階 | 公開事例で報告された提供物 | 求める行動 |
|---|---|---|
課題を調べている | 資料、ウェビナー(SaaS支援の代理店AA) | 資料の請求 |
製品を比べている | 競合との比較ページ(SaaS支援の代理店AA) | 比較ページの閲覧、問い合わせ |
実装を考えている | すぐに作り始められる案内(開発者向けAPI企業Q) | 無料登録 |
導入・移行を考えている | デモ予約(SaaS支援の代理店AA) | デモの予約 |
採算を確かめたい | オンライン試算(太陽光・電力サービスX) | 問い合わせ・予約(試算の利用そのものは成果に数えない) |
情報を集めている段階の人に、いきなり商談予約だけを求めると、クリックは取れても成果につながりにくいと当社は考えています。ただしこれは設計上の仮説で、上の事例がそれを比較試験で示したわけではありません。
3. 広告が表示されない利用者がいることを前提にする
ChatGPTの広告は、Free・Goのプランの利用者に表示され、Plus・Pro・Business・Enterprise・Eduのプランでは表示されません。仕事でPlusやBusiness・Enterpriseなど広告が表示されないプランを使う担当者が多い業界では、届く範囲が狭くなる可能性があります。その割合は業界ごとに分からないため、テストで確かめるしかありません。
4. 判定日を営業期間に合わせる
受注まで数か月かかる商材では、30日で受注単価を判断できません。30日時点では「リード単価と有効リード率」までを判断し、商談・受注の判定日を別に置きます。
5. 対象は広告文・LP・除外リストで絞る
SaaS支援の代理店AAは、見込みの低い相手を除外する内容をヒントに書いたと報告していますが、公式ヘルプは、ヒントでは除外・地域・時間帯を強制できないと明記しています。既存顧客などのリストがあればカスタムオーディエンスの除外を使い、それ以外は広告文とLPで「誰向けか」を明示します。B2B支援会社Aも、「B2Bの製造業向けマーケティング」のように対象を書いた見出しは、クリック前に関係するかを判断してもらえると書いています。詳しくはコンテキストヒントとキーワードの違いの記事で扱っています。
この記事で分からないこと
- 日本のB2B商材での成果。 今回の事例はすべて海外で、国内のB2Bで受注まで公表された事例は、当社が確認した範囲では見つかっていません
- 各事例の広告費と件数の内訳。 SaaS支援の代理店AAは3社合計、開発者向けAPI企業Qは媒体費(各テスト群約1万ドル)と比率のみで、件数は公表されていません
- 受注までの最終結果。 広告支援会社Vの比較は、営業期間の途中で公表されています
B2B成果定義シート(テンプレート)
項目 | 記入欄 |
|---|---|
対象とする相談の段階 | |
広告の先に置く提供物 | |
リードの定義(広告管理画面に送るイベント) | |
有効リードの判定者と基準 | |
商談・受注の記録場所(CRM) | |
流入元の残し方(UTM、キャンペーンID) | |
比較する既存媒体と、その同じ定義の数字 | |
リード段階の判定日/受注段階の判定日 |
よくある質問
Q. B2BはChatGPT広告に向かないのですか。 向く・向かないは、公開事例からは言い切れません。成果が出たと報告する例と、出なかったと報告する例の両方があります。確かめるには、成果を段階ごとに定義し、同じ定義で既存媒体と比べる必要があります。
Q. 仕事でChatGPTの有料プランを使っている人には届きませんか。 有料のGoプランには表示され得ますが、Plus・Pro・Business・Enterprise・Eduのプランでは広告は表示されません。同じ人が個人ではFreeプランを使っている可能性もあり、届く割合は業界や職種ごとに分かりません。
Q. 何件のリードがあれば判断できますか。 当社の目安は成果10件です(公式の基準はありません)。成果が10件に届かないうちは単価の優劣を断定しないことを勧めています。B2Bでは件数が少なくなりやすいため、有効リード率など途中の指標もあわせて見ます。
Q. 高額な商材でも使えますか。 SaaS支援の代理店AAは、5万ドル超の商材でも取り組んだと報告しています。ただし受注までの結果は公表されていません。高額な商材ほど、受注までの判定日を長く取る必要があります。
Q. 最初は何を成果にすればよいですか。 受注までの距離が長い商材では、資料請求やデモ予約など、件数が出やすい成果を最初の判断に使い、その先の商談・受注はCRMで追う形を勧めます。
まとめ
- B2Bの事例は、クリック・到達・リード・商談・受注のどの段階の数字かを先に確認する
- 安いクリックはリードを意味しない。問い合わせ単価と受注単価は逆転し得る
- 成果を段階ごとに定義し、CRMで流入元を残して商談・受注まで追う
- 相談の段階に合わせて、資料・比較ページ・デモなど提供物を変える
- ヒントで除外はできない。リストがあればカスタムオーディエンスの除外、なければ広告文とLPで対象を明示する
法人向けの商材で、どの段階を成果にし、どう比べるかを整理したい場合は、既存媒体のリード・商談の数字をお手元に用意のうえ20分の無料相談をご利用ください。
出典
- 事例:開発者向けAPI企業Q(OpenAI公式、2026年9月1日公開)、フォーム作成SaaS AC(OpenAI公式、2026年9月3日公開)、SaaS支援の代理店AA、B2B支援会社A(2026年8月26日公開)、広告支援会社V(2026年9月23日更新)、太陽光・電力サービスX
- Ads in ChatGPT(表示対象のプラン)
- Write Context Hints for ChatGPT Ads(ヒントは除外を強制できない)
いずれも2026年9月25日に本文を確認しています。事例の数値は各社が公表した条件での結果です。
変更履歴
日付 | 内容 |
|---|---|
2026年9月25日 | 初版。公開事例6件と公式ヘルプを本文確認 |
次回確認予定:2026年9月28日。 B2Bの新しい公開事例と、各事例の追記がないかを確認します。